最後の夏-ここに君がいたこと-
すると観客席が映し出された。

地上波で中継されているサッカーと違って、観客席も空席が目立つ。

でも、サポーターもちゃんといて、若い女の子3人が『長谷川悠太』と書かれた横断幕を掲げてた。

ふわふわしていた胃に突然、嫉妬心が重くのしかかる。


「おぉっ! 悠太にファンなんかいるんだ!! すげーな!?」


「うん……」


浮かれた気持ちが突然落とされ、悠太が遠い存在に感じた。

きっとこれから先何度もこんな気持ちを味わうんだろうな。

こんなの耐えられるのかな?

スクリーンには、他の選手と笑顔で話している悠太が映し出されていた。


「あぁっ!! もぅっ」


「な、何だよ志津!! びっくりすんだろー……」


そうだよ、何嫉妬してるんだ。

応援してくれるファンがいるなんてすごいことなのに。

誰かの支えがなきゃ、人は頑張れないんだから。

自分に必死で言い聞かせた。


「私も、会場に行きたかったな……」


「いつか絶対行こうなぁ」


私の心の中なんかまるで知らない陸は、呑気な表情でガッツポーズをしてみせた。


「ふっ、そうだね」


「何だよその笑い……」


納得いかないというように陸が唇を膨らませた。

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