私に恋を教えてくれてありがとう【下】
途端に華子はすばらしい!と感嘆した。

早々料理が運ばれてきたのだ。



祐樹は気の利くことに先に華子の好きなメニューを頼んでくれていた。


カロリーの低そうな大根サラダ、レバ刺、

そして最後にみそベースのもつ鍋が程よいペースで運ばれた。




「いやー!!実に見事だよ。

 素晴らしい。

 すきっ腹を少しずつ満たしながら会話もできて、

 尚且つ!鍋ができるのを待つ。

 うん。完璧だよ」




全く世間話も何もしないまま

即いただきますをしながら祐樹を褒めちぎった。




その様子を濃い店員が見ていて、にやりとしている。



祐樹は照れを隠しながら、照れていた。






二人はつまみ始め、昔の話に花を咲かせた。





中学の頃席が隣だったこと、

実は体操着に着替えるとき

華子のブラ紐を見てしまったこと

(こんな話も今は昔なので全く気に留めなかった。逆に祐樹は気に留めて欲しそうな顔をしていた……)





……そしてノートの話。





「そういや、よく授業の板書

 とってくれてたよね」



華子はレバ刺しをゴマ油につけてうまうまほおばっているところだった。



「ほーーーだっけ?」




「そう」祐樹はお品書きに頷いた。



「んーーーーあぁ!うん!うん!うん!

 あれでしょ。

 総体のときとか授業出られない日が多くて」




刺身を飲み込んで、箸で記憶をたどった。





「結構席近かったからねぇ

 ご近所意識が強かったんだよね~

 義務感というかね」




そう言いながら祐樹の方へ視線を投げると、

彼はちょっとショックな顔をしていた。

その顔を見て華子は急にお品書きを見るそぶりをした。
< 10 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop