私に恋を教えてくれてありがとう【下】
200以上の人数で利用出来るロッカールームは広く開放的だが

この夏の日

窓も開けず、エアコンもかけずのこの状況は

今の華子を一層苦しめた。



ブラインドの下がった窓からはようやっと降り出した横殴りの雨が見え

その雨音は華子のすすり上げる音をかき消す様。


まだ外の降り出しは序盤だが
華子は既に天変地異が起こっている感覚に陥っていた。



足の踏み場を模索し、必死に抗う。




しかし雨足はより強くなり窓を叩き
隠れていないで、そこからはやく出てこい!と包囲されている様だった。



「考えを……




 整理しないと……」




屈み込み片手で項垂れる頭を支え
もう一方の手は床を捕え

いつ夢から覚めても平気なように態勢を維持していた。


他の現実に還るのを待つように……。
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