私に恋を教えてくれてありがとう【下】
送った直後自分のしたことに
恐れ慄いた。


今のメールの内容では危険をはらんでいるのでは……!!


墓穴を掘ってしまったかもしれない。


なんて単細胞な事をしてしまったか。




華子は誰もいないのをいいことに
その場で呻き

大きな溜息を腹の底から出し

足元にあった埃が小さな竜巻状になって吹かれていった。


今まであった落ち度もこんな風に吹き飛ばせればいいのに……



そんな馬鹿な考えしか浮かばない。


でも、覚悟があって付き合っていたのではないだろうか。


自問したが思いついた答えは別のものだった。


窮地に陥った時の人間は素直なもので、

祐樹と会った時の様な“安全な付き合い”を望んでいるのが明らかだった……。


しかし仕方がないのだ。


本当にただ口走っただけかもしれないし、知っていたにせよ周知でないかもしれない。



……とりあえずは

 
しらを切ろうと心に決め

華子は抱えきれない程の大きさの不安をか細い体にしまい込み

鏡に映る自分を“華子”にし


ロッカーに鍵を掛け
外来へと向かった。




ロッカーの中の小さなあえぎに耳を傾けることが出来ぬままに……。



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