私に恋を教えてくれてありがとう【下】
この職場はこんなに賑やかだったのか。


華子は道すがら行き交う患者、

職員に啓発的な挨拶をして

悪評紛々に耳を傾け

似た名前が出ただけで過剰反応した。





何分今は被害妄想が激しい為

すれ違った後、後ろ指を指されていないか気になってはいたが

凛とした態度をとる方を選んだ。


ここで右往左往してしまったら全てを白状していることと同じだと言い聞かせ


どうにかして事実をひっくり返してやりたい……切に思っていた。


しかし七転八倒。


階段を下りる途中、壁に飾ってある某画家の絵すら

華子を睨んでいるように感じ


気が散りすぎて、

もう下り終わった階段をもう一段踏みしめようと

膝の力を緩めて転びそうになり声が出た。



「……うっわ!!」




華子は小さい子が遊んでいるときの飛行機のポーズをとってしまい


階段を登って行き違うはずだった人にぶつかってしまった。



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