私に恋を教えてくれてありがとう【下】
濁流に呑まれぬように

シュミレーションを幾度も繰り返すのを


もう一方の

まだうららかな花畑に居た頃の自分が

叱責してくる。




ぼろを纏った純真な阿婆擦れと


小奇麗を保つのに必死なすれっからしが胸倉を掴み合い、もがいている。



何れにせよ自分が最悪の立場という事に違いはないのだというのに……。



素晴らしく燃えたぎった記憶は

ほんの切れ端浮かんだだけで

今では牧田と関係し合う以前の

倫理的な思考が華子を支配しようとしていた。


それは今に始まっていたことではなく、

徐々に進行していたのだ。



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