私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子はいつも牧田の家庭の事を

忘れることはなかった。




そんなおもいをよそに

牧田というと自由奔放に連絡を取りたがったのだ。


自宅に居ても、出先でも。



その行動は華子にとって気持ちの良いものではなく

ただ不安要素を増やすだけでしかないのであった。



解決する為に何度も訴えたが

暖簾に腕押し状態で

もやもやとしたストレスが

ご親切に電波に乗って華子へと運ばれてくるのであった。



そんな幼稚さと強引さを兼ね備えた

牧田の猛々しさには

飽きれるものがあり



「声が聞きたくてしかたないんだからいいでしょ?」



そういえば私が黙ると思っている様だった。



本当に私の事を想っているなら

自分から茨を仕掛けないでほしい……


そうではないか?


自分ひとりの恋愛ではない。




むしろ私たちの場合は二人の恋愛という訳にもいかない……


鳴り響く牧田の携帯の電波の先には

もう一人の女がいるのだから……。



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