私に恋を教えてくれてありがとう【下】

でも帰りの車の中では開口一番

「私機嫌悪いですから」


そうやってバシッというのがお決まりで


「ごめん、

 また僕だめなことをしてしまったんだね


 本当にごめんなさい」



と、牧田が謝罪するのを仰ぐのだ。



電話ではネチネチと理解し難い五択を並べるのだが


華子自体がそばにいると

断然素直になる。




華子はそんな牧田の姿を愛しく想い


「いつも言い過ぎてごめんなさい

 でも、私を大切だと思うなら

 もう少しだけちゃんと考えてほしいの」



清流の様に言い


顔を二人の間の中間まで近づけ


牧田が体勢をこちらに捻り


息遣いを唇に感じるのを待つのだ。




牧田はすんなり罠にかかる。



華子はそれをおいしくいただき


彼も同じく


そうされたいが為に業と罠にかかってきていたのだろう。




「あなたのこと


 愛しています」




牧田はそう囁くが華子は言い返さない。


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