私に恋を教えてくれてありがとう【下】
心躍るかわいいオルゴールの音楽が流れて

店員が手拍子をしている。




今までの雰囲気と打って変わって

コンロの火さえ厳かに見えた。




華子は身を乗り出してきょろきょろした。




だってこのパターンは誰かのお誕生日であろう。




案の定キッチンの奥から

バースデーケーキを持った定員が出てきて、

木製の通路を転ばないように気を配りながら

くろこみたいに歩いた。



なんてイチゴだらけのケーキだ。

何号なんだろう……直径が10何センチ位で

一人用?


てっぺんで花火が賑わっている。


蝋燭は……見えるところ2本だ。






華子は無邪気に歓声を上げ、

みんなと一緒に手拍子をして祐樹の前で歌い始めた。





「ハッピバースデーだーれだー♪

 ハッピバースデーだーれだー♪」




祐樹は上機嫌に歌う華子を見てふき出した。






そしてケーキは……






「ハッピバースデーディア……!?

    




  わたしかー!!!!」






華子の前にイチゴの花畑が置かれたのだ。



祐樹は腹を抱えて笑っていた。


「お……!おめでとう……あははは!」




あまりにも華子が間抜けだったのだ。




そして店員、客から拍手を浴び

華子は笑いを堪えながらろうそくの火を吹き消した。


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