私に恋を教えてくれてありがとう【下】
きょとんとした牧田の顔つきがこんなに憎たらしく思うことはなかった。



「だって、見つけたから

 はやく一緒の時間持ちたいし」



この医者とは思えない

あまりに浅はかな言葉に

華子の怒り、そして悲しみが

沸点に達しそうになり



心なしか華子は

自分の顔の筋肉が思い通りに働かないという

症状に見舞われた。



華子は大きく息を吸い

出来るだけながくため込み

一気に吐き出した。



「先生。

 私が何でここまで車に乗らなかったか分からないんですか?」




牧田を見る華子の目は細く鋭いものに豹変し

彼はそれを見るなり

口を尖らせ、

若干臍が曲がった様だ。



「わっかるでしょ!

 僕だって頭の切れそんなに悪くないからねぇ~」



そう言い、牧田はゴキブリ車を発車させた。


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