私に恋を教えてくれてありがとう【下】
確かに病院に近いしなるべく早くこの場を去った方がいい。


しかし今の華子にとって

この行動も揚げ足を取ることが出来るのだ。





きちんと話をしなければいけないこういうときは

普通に話が出来る環境を作るべきでしょ?



貴方は患者が亡くなったとき

親族との対面を、他の患者のレントゲン片手にやるつもり!?






もう一人の華子が叫び、当の本人はぶっちょう面で黙りこくったまま車はETCを潜り


速度を上げた。



車内で聞こえるのは牧田の勉強用か

華子の為に用意したのか

糖尿病に関するCDの声。



『この場合HbA1cはあがり……』



『牛肉、ウナギ、鳥のレバーなどは大変コレステロールが多く含まれ……』





華子には実際勉強になり

やはり考える。



私の為にこれをセットしたのかと。



そしてぶっちょう面が少し快方に向かったころ

細かいエヘン虫をし



「佐藤さん」



牧田が発した。




その声はただ数分黙りこくっていたせいか

擦れ、裏返り

ただただ間抜けで

哀愁が漂い

エンジンをふかせる動作が尚更

華子の冷淡さを失わせた。




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