私に恋を教えてくれてありがとう【下】
なんの虫の音だろうか
彼らは困惑した華子の心を楽しみ騒ぎまわる。
虫はうたう。
“お前は普通じゃない”
“ただの泥棒だ”
“地獄へ堕ちろ堕ちろ”
“いいきみだ”
「………………」
幻聴にすぎない事は勿論分かっている。
でもそう聞こえるのだ。
職場でも同じ。
誰も自分に話しかけてこないとき
決まって聞こえるし
隅のどこかから視線を感じる。
まぁそれは本当なのかもしれないけれども……。
100メートル。
されど100メートル。
この距離で華子は沢山のことをおもった。
右足、左足、右足、左足……
いつもとなんら変わらない歩くという動作に戒めを感じ
まるで死刑囚をおもわせ
足枷はこの若い女の足取りを重くさせる……
その先は
先刻“彼等”を置き去りにした筈の駐車場だった。
彼らは困惑した華子の心を楽しみ騒ぎまわる。
虫はうたう。
“お前は普通じゃない”
“ただの泥棒だ”
“地獄へ堕ちろ堕ちろ”
“いいきみだ”
「………………」
幻聴にすぎない事は勿論分かっている。
でもそう聞こえるのだ。
職場でも同じ。
誰も自分に話しかけてこないとき
決まって聞こえるし
隅のどこかから視線を感じる。
まぁそれは本当なのかもしれないけれども……。
100メートル。
されど100メートル。
この距離で華子は沢山のことをおもった。
右足、左足、右足、左足……
いつもとなんら変わらない歩くという動作に戒めを感じ
まるで死刑囚をおもわせ
足枷はこの若い女の足取りを重くさせる……
その先は
先刻“彼等”を置き去りにした筈の駐車場だった。