私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「ん~……行こう!食べ行こう!
朝にパーキングで食べただけだし
そろそろ昼どきだし!
魚ケーキはないと思うけどね」
祐樹は、行こう、と合図し傍に留めてある車へと誘い
華子は両手で顔を挟み細かく頷きながら返事をした。
助手席で他愛もない話をしながら華子は考えていた。
……しまった。
いつも心の中で白石のことを“祐樹”と言っていたもんで、つい本人を前にしていながらも、油断してしまった。
実際今の関係は特に今までと変わりないが、仲がいいのだから呼び捨てだって構わないであろう。
でも、“傍にいたい”と言われたし、今回日帰りではあるが旅行にも誘われたのにも快く受けた。
私は祐樹を好きで、彼は私を好きと思っていいのだろうか……。
でも……。
----華子には彼の行動から分かる気持ちを信用することが余りに至難だった。
よく人は云う、“口先だけでなく行動で示せ”。
しかし、今の華子にとって確信のある“ことば”というものがなければ一線は消えることがないのだ。