私に恋を教えてくれてありがとう【下】
外来師長は一呼吸おいて一気に吐き出した。

「あの男は私と滝瀬看護師をパワハラで訴えようとしているみたいですよ。

ご丁寧に先日、看護部まで宣告しに来たそうで。

頭の悪い男だよ。

あの、唯我独尊のかたまり!

その場に私がいればとっちめてやれた!!」


拳を握りしめ、彼女は総師長と事務長を横目でフンっと見た。

そして総師長が後を引き継いだ。

「“僕と彼女のプライベートに土足で踏み込むな”……そう非難されたのよ……」

心なしか彼女の眼鏡の奥に鋭さを感じ、華子はパッと視線を外した。


「気違いだわ。

 プシかしら」

唾を吐き捨てた濁声がナースステーションに響き、総師長は重い一瞥を投げた。


こんな事態になるなんて予想だにもしていなかった。

なんて心胆寒からしめる男なのだろう。

結局その話は今どこまで行っているのか、聞きたい事が喉に詰まってくるのを感じた。


だって、その内容によっては自分の立場がまた“牧田サイド”へと傾いてしまうのだから。


でもこうやって私を護衛しようと提案しているからには不利になってはいない?

そういうことなのか?と簡単な整理を終え


目のおぼつきが治っていった。


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