私に恋を教えてくれてありがとう【下】

「はい!

 小児科佐藤です」


『…………』


返事がないが、電波は繋がっている。

ざわざわと空気のふれる音のみが響く。

「……もしもし???」


『…………ンコホッ』



鳥肌が立った。





この咳払いは……




『私です。お願いだから切らないで』






……牧田……


思わず呼吸を止め、もう喋ってしまったにも関わらず

鬼に見つからぬよう

必死に隠れた。




『華子、ごめん。

あなたが小児科に入って行くところが見えたから……。

大丈夫。

ちゃんと今屋上からかけてる。


……あなたにくち酸っぱく云われてたから……



といっても、今更かもしれないですね。


もう僕の着信は受け付けてくれないようだね。


あいつ等に言われたんでしょ?

知ってるよ。


うちの人間が僕に逐次報告するから……。



華子は大丈夫?

あいつ等に嫌なことされてない?

華子、

あなたがここを辞めるなら僕も辞めると伝えるつもりだよ』



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