私に恋を教えてくれてありがとう【下】
『もしもし?

  聞いてるの?』


華子は想い出の浮揚を受け入れすぎていて

祐樹そっちのけにしてしまっていた。

「…!ごめ!なんだって?」

『だからね?

 退職の事どうなったのってきいたんだよ?

おとうさんも退職するんでしょ?
昨日連絡、夜遅かったから

昼休憩にはちょっと早いかもなとか思いながらもかけてみたんだけど、どうしたの?

今外だよね?

もう辞めちゃったとか?』



「し、質問攻めだぁね

あはははは!」


華子は余りの勢いに吹き出した。

『……あ……ごめん……

一気に……』



「はいはいはい、いいの大丈夫」

電話越しにうつ向いている彼の姿が見えた。


「辞めなくて済んだからさ。

それと、今日はちょっと体調悪くなって……


今はもう大丈夫なんだけどね!


ほら、職場が医療関係だと

体調管理厳しいから

皆に帰れ帰れ言われちゃって……」



『じゃぁ、いつもの公園とか?』


「正解ですねぇ」


華子はニヤっとした。

……わかってくれている……

そう思ったら顔が歪んでしまったのだ。


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