私に恋を教えてくれてありがとう【下】
これはあくまで聞いた話。
情報は総看護師長からだ。
華子が気がついた頃、既に滝瀬の姿はなかった。
牧田はパワハラで訴えると、誰より滝瀬に食ってかかったそうだ。
……禍々(まがまが)しい。
なんといっても滝瀬は内科病棟の看護師で
牧田はそこの医師なのだ。
どんなことが繰り広げられていたか……。
あのかえるの様な人間にも看護師の一面があり
患者の命を最優先させた結果だとか総看護師長は漏らした。
それほど牧田の手口が卑劣だったということであろう。
……自惚れではないが
牧田は華子の事をまだ想っている。
証拠に携帯には公衆電話の履歴がズラリ。
しかもほぼ全件留守録がされている。
無言のものもあれば
一言だけ“出てくれない?”
やら……。
この時点でもう華子にとって
牧田の存在は“恐怖”でしかなくなったのだ。