私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子の大好きな癖のあるチャイティーラテの香りが二人の鼻先をくすぐる。
付き合いたての頃、祐樹はこの香りが苦手だったもんだ。
しかし、今となっては感化されたか洗脳されたか
二人同じものを頼む、ないし、すすんで頼む様になった。
手に入れた帳(とばり)はなんて居心地のいいものなのか……
二人で話をしている間、しばしばトリップすることがある。
もうあの人のことは思い出さない……
そうしているのかもしれないけれど……。
「ふたくちコンロと、独立洗面台だけは譲れないからね」
お茶を口にしながらテーブルの下で祐樹の足を小突いたら
彼は苦笑いを装い
幸せに頬を染めた。
「わかってるってば。
俺を誰だと思ってるの?」
「はいはい」
それ位じゃなきゃね、と
華子は肩をすくめた。