私に恋を教えてくれてありがとう【下】
気づく訳もなかった。
華子の行く先に真っ黒な車が闇に溶け込んでいた。
その中に誰が乗っているかなんて……。
見えるはずがない。
音楽を聞いていた……
何も聞こえる訳がない……。
「!?」
華子は後部座席に前もって乗っていた
大柄な男に力強く、あっという間に
車内に呑まれていった。
「イヤーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「だれか!!だれか!!助けて!!!!!」
華子の身体は何かとてつもなく頑丈なもので縛られた。
必死で四肢をばたつかせても何の意味もない。
大声だってあげたが
ひとっこひとり通らないこの道……。
満足に縛った犯人はゆうゆうと運転席に移動し
車を走らせた。