私に恋を教えてくれてありがとう【下】
牧田は華子の口を封じることはなかった。
「華子?
すみません。
これくらいしないとあなた逃げてしまうから……」
車を走らせながらちょこちょこルームミラー越しに話しかけてきたが
華子は口を開かなかったし、目も合わさぬよう努めた。
どうにかしてここから脱出しなくては……その一心。
しかし、数分しか走らないうちに車は止まった。
まわりは……見えない。
窓にフィルムが貼られていて……。
バタン!!
「え!?」
突如牧田が車から出てどこかに行った……??
と思われたが
……ガチャ
「……!!!!!!!」
「驚いた?」
牧田が至極幸せそうな笑みをし、華子の居る後部座席へと侵入してきたのだ。
華子はもうなり振り構わず、どうにか反対側のドアを開けようと
不自由な身体で向こうまで移動したが
それも無駄な抵抗であった。