私に恋を教えてくれてありがとう【下】
21 幸せを打ち砕く物
焼きつく記憶。
今は狭い車の恐ろしい記憶しか蘇らない。
「……何でこんなこと……
するの……」
牧田はベルトを直しながら言った。
「……あなた……
遠くに行くって……
聞きました……」
------華子をもう一度手に入れたかった-------
牧田は後部座席で事を済ませ
華子の身体は縮み、酷く震え
「……
もう……
私の心も
…………遠くに行ってるの……
……知らなかったですか……?」
か細いひな鳥の様な声が
車に
牧田に
遮断機を音もなくおろしていった……。