私に恋を教えてくれてありがとう【下】
二人の間に置かれたもの。
それは
“人工妊娠中絶同意書”。
華子は決意したのだ。
「なんの相談もなしにこういうの差し出されると……
なんか……おれ……」
「もう!
……もう、予約はしてあるの。
あとはこれだけなの!」
祐樹のことばを最後まで聞かずに切に頼んだ。
「「…………」」
沈黙はそう長くは続かなかった。
「……わかった」
祐樹の一言が華子の心臓に息を吹きかけたのがわかった。
「祐樹……」
「うん。
そうだよね……ごめん。
おれ、まだ全然経済力もないし
実際支えていく自信がまだないんだ……。
だから……今回は……
本当ごめん……」
俯きながら囁くように、無念さを必死に伝える祐樹を華子は見た。