私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は祐樹からこう言われると考えていた。
「本当に俺の子?」と。
そして別れるつもりだった。
普通わかるだろう。
好きあっている同士なのに
何の相談もなしに中絶を申し出る。
他の人間の影が見えないか?
それだけ信用されていると受け止めていいのやら
何かに気づこうとする姿勢がないのか
それともただ単に何もわからないのか……。
でも彼の流した涙の意味は深かったんだと思う。
予期せぬ方向に事が進んだとことを喜ぶべきなのだろうか……。
でも、華子の心を蝕むのはとてつもなく汚濁したもの。
このまま何も言わなくていいのだろうか……
この葛藤の存在が
生まれ変わったはずの華子にとって煩わしいものでしかなかった。
“お前は倫理的になったんじゃないの!?
何で正直に言わないの?
それが今のお前にとっての倫理なんじゃないの?”
幾度となく少しでも暇があれば
華子の中の華子が騒ぎ出し
その度陳謝するのだ。