私に恋を教えてくれてありがとう【下】

施術前日。

華子は同意書を出し

あたたかみのあるピンクの壁、

これからもう一人の家族が増える女性の為の本たちがズラリ並ぶ

待合室の端で、ただ黒く、ほんの少し白い丸の映った写真を見ていた。



もう勤め先では華子の噂で持ちきり。

悪阻が始まってしまっていたのだ。


介助につこうとも華子の場合初期症状であった下腹部痛が酷く目立ち

しゃがみこんでしまうという始末だ。



目の肥えた看護師たちに囲まれているのだ。

ばれない訳がない。



しかも少し休みをもらうという流れは当たり前にこの手術を連想させる。



もしかして牧田に伝わっていないだろうか……

牧田の妻に伝わっていないだろうか……



身震いがする。




華子は今日まで何度もお腹に手を当て、赤ん坊に訊ねた。



“あなたは誰?

 祐樹との赤ちゃんなの?

 それとも……?”


ただ虚しさがこみ上げる。










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