私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は受付に祐樹からもらった費用を渡し
一度診察に入り、今回の手術の内容、施行時間など
事細かに説明を受けたのだが
その時の意思の目“本当にいいのか?”と言いたそうに見えた。
今日開院一発目の手術だ。
看護師はやや焦り気味に二階の手術室へと案内したが
華子は少し時間をもらい
「祐樹!」
と、もう一度一階へ戻った。
「どうしたの!?
……やっぱり……??」
祐樹は意表をつかれ、今まで取り繕っていた泰然さを忘れた。
その姿は華子の愛でる彼の姿で、華子の心臓に重いものがのしかかったようだった。
眉根をつり上げ、目を潤ませる彼はこれから消えゆく儚いものを
重く受け止めているに違いない。
祐樹がまた言葉を続けようとしたが、華子はそれを遮った。
「これ!」
「?」
祐樹の額にピシッと便箋を叩きつけ、彼は思案顔でそれを手に取った。
「それ、読んでおいて?
どこかでお茶でもしてていいからさ」
祐樹はまじまじとそれを見てますます泣きそうな顔になっていた。
「なに?これ??」
華子はいつものニヤっとした不敵な笑みを残し
聞こえない位の声で囁きながら
静かに祐樹の前から姿を消した。
“ごめん、ありがとう”と。