私に恋を教えてくれてありがとう【下】
……コチ コチ コチ コチ………
穴の沢山空いた白い天井、きみどり色のカーテン、白い掛布、枕元の眼鏡、自分のものとは思えない自分の手。
視界はゆっくりと鮮明になり始めた。
……コチ コチ コチ コチ……
この音は……時計だろうな、当たり前な思考回路が当たり前に働かない。
随分ゆるりとしたもんだ……。
……コチ コチ コチ コチ……
「……」
華子は下着に貼り付けられた厚手のものの感覚を察知し
それに安堵の表情を見せる本当の自分がいた……。
施術を終えたから?
違うだろう?
……もう自分の腹の中に誰もいないからだろ?
……コチ コチ コチ コチ……
でも……苦しい。
祐樹の子でないし、産んだらきっとこの子は咎め立てられるであろう。
確かにほっとしているけど
でも……
「ひ……どい……
私……
ごめん……ごめん……ごめん」
まだ力の入りきらない手で、シーツに爪を立て嘆いた。