私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子はその場に硬直していた。
「……どうして??」
大きな雨粒が崩れる瞬間を見詰めながら言った。
「どうしてじゃない」
温かな身体で背後から華子を力強く包んだ人間。
「……祐樹……」
華子の心拍数は一気に上昇し、重苦しい心音が足から伝わり地面が揺れ
水たまりに波紋が出来るのではと思った。
お願いだから守らないで……
今はただ……
「ごめん……放して……」
私を世界一の卑劣な人間にしておいて欲しい。
「いやだ」
そうしないと
「……私は許されないから……」
抗う華子を祐樹はがんと放さず、なおいっそ抑えつけた。
「許されないから!!!!!!!」
もう自分の声とは思えない、喉がしみて声帯が故障していた。
肩も唇も、指先まで震え、もしかして地面が酷く揺れているのか?
そういう感覚に襲われているだけなのではと錯覚してしまうくらいだ。
華子の身体をさする祐樹の手、密着する一回り大きな身体は何でこんなにあたたかい??