私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「怖かった……!!」


震える全身から思い切り出した華子の答えに

祐樹は頷いた。



でも華子は、誰にも言えなかった言葉を吐き出してしまったことに

はっとした様に、両手で口を塞いだ。


祐樹はそれに気づき、大丈夫だから……、と、殊更強く華子を抱きしめた。


……知らぬ間に克己心が働いていた。

しかし、祐樹の前ではそんなもの滑稽なものにしかならないのだ。



祐樹の鼓動が聞こえ、自分の鼓動と共鳴して同調し

華子の心から壁を取りさらっていく。


「華子?」



「俺がなんで華子を好きになったか知ってる?」



祐樹の胸でうずくまる少女は少しばかり頭を横に振った様に見えた。


一息置いてから祐樹は語り始めた。





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