私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「昔……

 先生の給食を一番最初によそったり

 すすんで黒板消したりしてるのとか

 そういう様子結構見てたんだ。


 っていうかいつの間にか目で追ってた」


華子は初めて耳にする話に驚きを隠しきれず、この胸の中から出ない様にしようと必死になった。


「はじめは、この人はもしかして内申点目当てなのかななんて

 捻くれた目で見てたんだ……


 でも、総体で休んだ後の授業でノートを開いたら俺のじゃない字で

 何ページもの板書が書いてあった。


 きっとあいつだろうって、華子が書いたんだってピンときた。


 それで、俺、華子は俺の事が好きなんじゃないかって思ったんだ。」


祐樹は頬を赤らめ、ひとつ大きな溜息をして続けた。


「でも、俺が華子にお礼を言う前に他の奴がお礼を云った。

 俺の友達で同じ部活の草野だった。
  
 二人は嬉しそうに笑い合ってた。

 その姿をもの凄く遠くから見ていたような……変な記憶がある」



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