私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「そしたら知らぬ間に二人は付き合ってた。

 なんだか俺……酷くむしゃくしゃして、彼女をつくった。

 でも、時折頭に浮かぶんだ。

 あいつは草野が好きでそのカモフラージュとして俺のノートも書いたのか?

 草野に見てもらいたくて先生の配善までするのか?

 よく分からなかった。


 結局、俺は華子のことよく分からないまま半年位過ぎた辺りで体調を崩して一日休んだことがあったんだ。

 そのあとの行動はわかると思うけど

 馬鹿な俺は期待と不安いっぱいで一冊だけノートを開いた。


 そしたら……」


祐樹はうずくまる華子を少し引き離し、見詰めた。

「まっしろ」

華子はそんな!と云わんばかりに目を真ん丸くした。


「俺、すげえ変な気分だった。

 怒りにも思える変な気持ち。

 やっぱり若かったからかな……俺本当馬鹿だったんだ。


 他の科目の時ノート開いたら華子の字がびっしりで

 思わずニヤけて草野に小突かれたのおぼえてる。


 それで、もう一度最初に開いたノートを開いたんだけど、やっぱり書かれてなくて

 ひとつ前のページをめくったんだ。


 そしたらそこに一言だけ、華子からのメッセージが書いてあったんだ」


華子はハッとした。

思い出したのだ。



「“自習になったよ!よかったね☆”

 あの字をずっと眺めてた。


 そしたら“☆”を書く前に何か他のものを書いた跡が残ってた。


 おぼえてる??」


祐樹はもろ手で華子の頬を、今にも割れそうなガラス細工の様になで

やわらかく

やわらかく微笑んだ。



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