私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「……“ハート”だったんだ」
華子はその記憶に呑まれ熱く瞳を閉じた。
「俺、思ったんだ。
ほんの些細なことだけど
この子は人としての道を、道徳を、強く守ろうとしてるんじゃないかって。
本当は軽くハートとかつけりゃいい。
でもそうしないのが華子。
黒板なんて、当番が慌てて消すのを待てばいいし
配善も、プリントの配布も
牛乳配りだってそうだ。
俺達はそう思っていたけど、君は酷く倫理的なんだ」
「……っ!!」
「いいから俺の話を聞いて」
「だから華子を好きになった訳じゃない。
ただのきっかけに過ぎないんだ。
皆の前ではしっかりしていようと気丈に振る舞う華子とは裏腹に
人一倍脆いんだ」