私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「華子?入るよ?」
病室の戸を開け、頬を赤らめながら入ってきたのは祐樹。
「寝てるんだ?」
赤ちゃんをやわらかい笑顔で見つめ、ちょいちょいっと指で頬をつついたが
すぐに華子の傍の椅子に腰をかけた。
「何??どしたの?かしこまってさ?」
きょとんとした華子を、恥ずかしげに見る祐樹は深呼吸をして言った。
「……なんだか俺……すごく愛してる……」
「!?
当たり前でしょ!?何言ってるの!?
やっと生まれてきてくれたんだから、そうじゃないと困るよ!!」
「いや!!違う!!」
華子は戸惑った。
「違うんだよ。
華子を……すごく……愛してる」
そう言った祐樹は女の子みたいにもじもじしていたが
今の彼は、少し昔と違い、きっちりと父親だった。
髪のワックスはつけてない様に見えるし、
コンタクトを入れる間もなく駆け付け、度の入った分厚い眼鏡で、
でも、きっと頬ずりをしたいのだろう……髭だけはきちんと剃っていた。