私に恋を教えてくれてありがとう【下】

二人はあたたかく微笑み合い、

“そら”と命名したのだ。

どんな色に染まっても、青空に戻るんだ……。


……。


この時ふと、思ったんだ。

命に名前がないことの悲しさを。

牧田が無き命に命名した理由が……。


水子という名前ではだめなのだ。

どんな経緯があったにせよ、あの子はここにいた……。


華子は百合に、出産の報告も兼ねて電話を入れた。


「ねぇ……やっぱり、先生は本気で考えてたのかな……私とのこと……」


『そうかもしれないね。

 華子ちゃんと先生で、気持ちの重みが違ったのかもね?』


「……うん……確かにあの時は、本当に愛してた。

 でも、私は最初から諦めていて付き合ってたのかも。

 ただ、その時の気持ちだけに素直になって……

 “素直”っていう言葉で許されると思ってたのかな……

 いままで、押し殺していたもの全部ぶつけちゃった感じ……

 本当子供だったよ」


『そう考えると、先生も、どこか大人だったんだね』


「ね、気づかされたことがあったから……」

『反面教師??』

「……そうかもね

 じゃぁ、今度、そらに会いに来てね?」
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