私に恋を教えてくれてありがとう【下】

25 今語る

今年もまたそらの誕生日が来て、華子はもう一人の子供のもとへ行く。

もうそれは恒例の行事であった。


きなり色の清楚なワンピース、ダブルの黒い厚手のコート

ペイズリー柄のマフラーで会いに行った。

少しへんぴなところにあるもんで、もちろん車で、祐樹も一緒だ。


「祐樹……毎年ありがとう……」

華子は花を水切りしながら呟いた。

祐樹は線香が消えない様にしながらも、華子に冷たい風が吹きつけない様に守っていた。

「なにを……今更……当たり前だろ」
 
「当たり前じゃないから言ってるんだよ?」

華子はふふっと、立ち上がり間際、自然と上目遣いに祐樹を見た。

二人照れくさそうに、いつもの水子の像の場所へ向かうと

また今年も、華やかな花で飾られていた。


二人は酷く驚き、目を見合わせた。


だってそうだろう

ここに足を運ぶ筈の人間は、今、病室に居るのだし

数日前に来れる筈もない……入院する位の状態だ。





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