私に恋を教えてくれてありがとう【下】
混乱している華子の背中を押したのは、勿論、祐樹だった。

「ほら、お線香は?」

「……ありがとう、先にお花やるね?」

二人は凍える両手を合わせ、想いを伝えた。


このとき、いつも祐樹は、華子に負けじとながく黙祷を捧げる。


華子は、手を合わせながらも、祐樹を見ていた。


彼の姿は真剣そのもので、少し早い胸の音を聞きながら

年を重ね、やや細くなった髪が柔らかく揺れるのに

頬を赤らめた。


「ふふふふっ」


華子は、そんな自分の心を信じられない!と、ついつい吹き出し

祐樹はびくっとして黙祷を断念した。


「なんだ!?こわいな!

 まぁ、突然笑いだす位いつもの事だけど……」


「へへへへ!!!」


「ねぇ、今の笑いの意味はなに?

 馬鹿にしてる??」


祐樹は口を尖らせた。







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