私に恋を教えてくれてありがとう【下】
羽音は、やけに騒がしい。

そらの頭の中にいろいろな想いが交差している……

その頃

そらに類似した人物もバタバタと同じ場所に舞い降りた。


……華子は走った。


昔の様に、患者のもと、ドクターのもとへと息せき切らしているかの様……。


でも、足音は突然止まった。



前に立ちはだかるは

くすんだ黒髪をかき上げながらゆっくりと近づいてくる女性。



華子は目をかすめた。



その瞬間雷にうたれた。




遠い昔の面影を彼女は持っていた。






「……こんばんは。佐藤華子さん」




照明はきちんと辺りを照らしつけているだろうに、何故か彼女には

異常なまでの影が出来て見えた。



いきなりだ、華子の頭に昔の記憶の一部が何度も繰り返して

繰り返すたび、鮮明なものへと変わっていった。


……あの時ぶつかったのは……



固唾を飲んだ。



重く、苦い一飲みをした。




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