私に恋を教えてくれてありがとう【下】

26 真の愛の姿

足音は非常に早かった。

ひとり分の足音ではなかったからかもしれない……。

華子はハッとして爪を立てるのをやめ

足音の方に視線をやった。


夫人は勢いよく立ちあがり、椅子がもの凄い音をだした。


「先生……」


華子に向けられていた顔とは一変した、深刻な面持ちで

淳一郎と、その後に続いてきた華子にそっくりな女、

そらを見た。


そらはどうやら度肝を抜かれている。


無理もない、目の当たりにしたこのツーショットは

長年居合わせてはいけないものだったのだから。


「……牧田さん……至急病室にお越しください」


淳一郎はこめかみに流れる汗を拭わぬまま、ただその言葉を慎重に放った。



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