私に恋を教えてくれてありがとう【下】
一向の足並みは異常に速かった。

華子はそらと並び、後をついていくように小走りした。


白衣を翻す淳一郎の背中は眩しく、昔の記憶を蘇らせ


ここまでで何歩歩いた?

そらとは言葉を交わした?

コーヒーをあとで取りに行かないといけないかしら?


……余計な事を考えて、記憶を呼び起さないようにつとめたりしていた。

自分でも何故こんな事をするかが分からなかった。


……ただ  “混乱”。



そらは華子のおかしさに気がつき、

華子がみんなの遅れを取らない様にと、背中を押しながら歩いた。


背中の手には気がついたが、華子はひたすら前に歩く人間の脚元を見ていた。


……いつこの足は止まるのか。

……その先には……。



華子は胸に拳をあて、ぎゅっと服を掴んでいた。


……そして……


前の二人の足は止まった。


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