私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「あら……お取り込み中ごめんなさいね……」
ドアの開く音と同時、夫人が二人に言った。
華子とそらはゆっくりと離れた。
「さあ、どうぞ」
夫人は喫茶に居た時と同じように、細い腕を華子の方にやり
こちらに来いと促したが、華子は合わせる顔がないし、そんな資格もないといった様子だ。
「さあ、牧田が待っているわ。
私のお願いよ。
話しをしてやって頂戴」
その夫人の言葉に華子は気がつかれない様に固唾をのみ、足を踏み出した。
「先生もこちらへ来て頂戴」
反論する間を与えず、夫人は無理に淳一郎の腕を引っ張り部屋から出させ
華子はひとり、独特な下のかおりのする部屋へと入った。
ドアは夫人によって閉じられたのであろう、何の気遣いもないバタンといった感じで
昔、無理に好きな人と教室で二人きりにされた様なシチュエーションだ。