私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「……牧田先生……

 私もこんなにおばさんになりました。

 以前の先生でしたら酷く高い声で笑ったでしょう?」


華子はマフラーとコートを脱ぎ、腕にかけた。


「……先生と私は間違いを犯しました。

 あんなに素晴らしい奥さまがいるのに……

 灯台もと暗しでしたね……」


 ―――よく考えてみて?

 奥さんと離婚しなかった理由を……。


 私の気持ちも、本当は気づいてたんでしょ?―――

 
ただ私たちは幼かった……。

「先生……あの年でなんのいたりって言うんですか?」


牧田の顔は微笑んでいる様に見え、華子も片眉を困らせ微笑んだ。


「……でも、ひとつ言えます。

 どんな短い時間だったとしても、私は貴方に……」


少しだけ空いた窓から風が吹き

華子の前髪が揺れた……。


ああ……先生……






< 337 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop