私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は深々と、想いを込め頭を下げ
踵を返し、ドアを開け
夫人に向かっておじぎをした。
「主人に会ってくれてありがとう。
きっと喜んだでしょう……」
「……いいえ。……いいえ……」
華子はかたく言った。
「では先生、宜しくお願いします。
そらさんにもお手間をかけましたね……」
夫人は、またすぐ戻ってくるからちょっと……といい姿を消した。
その後ろ姿は凛としていた。
そう見せたかったのかも知れない……。
「……では、おかあさん、そらを宜しくお願い出来ますか?
僕はもう少し仕事がありますので……」
淳一郎が、本当に心配そうな顔つきで華子に頼み込んだ。
「ええ、わかりました……でも……
頼みごとがあるの……」
華子はそらに一瞥をなげた。
「……?何?」
そらはそわそわした。