私に恋を教えてくれてありがとう【下】
……私は思ったんだ。
あの病室で。
あなたの亡骸を目の前にしても……残酷ですね、確かに哀しさはこみ上げてくるのに涙が出なかったのです。
先生はもう昔の姿ではなくて……でもどこか先生で……。
そんなあなたの介護をしていた夫人の素直な想いに瞳が潤んだ。
あなたと夫人の年の差を考えても、こういう結果になるのは当たり前にわかっていたはず。
でも、夫人はあなたとの間に新し命を設けて育てることを決意した。
それは愛故。
―――あの頃の私は、いえ、私たちにはその“愛”も“勇気”もなかったんじゃないんですか?
おかしいものです。
もしも、祐樹の余命があと一年だとしたら……私は寧ろ……
あなたの奥さまと一緒で……子供が欲しい。