私に恋を教えてくれてありがとう【下】
超音波室の前の4人掛けのソファーに
べっとりとした髪の小男がゆうゆう腰掛けている。
「金井さん、
金井竜太さん
お待たせいたしました
中にどうぞ」
金井は返事がわりの会釈をし、
これから検査をうけるとは思えない軽い足取りで
華子の誘導に喜んで従った。
「こんにちは金井さん調子はどうですか?」
華子は金井にベッドで仰向けになるよう促し
金井はお利口にいうことをききながら
牧田に返事を返した。
「いやー
今日は気分がいいですよ先生
どうぞお手柔らかにお願いいたします」
牧田がカーテンの向こう側にいるのをいいことに
金井は話しながらも
自分の上半身をあらわにさせ、ベルトをゆるめ、
ズボンを下ろさせる華子を
酷く破廉恥な目で眺めている。
早く終わらせたい……。
最後にズボンが汚れないように紙のタオルを
挟まなければいけないのだが……
華子は怠った。
「先生、お願いします」
「はい、ありがとう」
「はい金井さん、ちょっと冷たいですよー」
牧田は早速ベッドの傍のイスに腰掛け
金井の腹にゼリーをつけて
検査を始めた……。
華子はベッドからこちらが見えないように
カーテンをしっかり閉め
牧田の今まで座っていた
イスに肩を落としながら座り
検査が終わるのを待った。
電気スタンドの黄色くぼやけた光と
牧田の低く心地よい“吸って 止めて 吐いて”
の言葉を聴きながら……。