私に恋を教えてくれてありがとう【下】
焦る手は、なかなかその封筒を上手に開けることが出来なくて


切り口がびりびりになってしまった。


風が吹く中、広げたそれには夫人の文字ではなく

見慣れた牧田本人の手紙であった……が


「……華子さーん!?」


華子は遠くから自分をさがす、親類の声に肩をびくっとさせ

手紙を手放してしまった。


はっとしたが、手紙はバルーンリリースをしたかのように

どこかへ姿をくらましてしまった。


手に残った封筒をおもむろに袖に入れた瞬間

後ろから祐樹の声がした。


「華子?何やってんの?ほら行くよ?」


「う!うん!ごめん!」


さささっとすり足で祐樹の元へと小走りすると

祐樹はニヤっとし

腕を華子へ差し出した。


「さて、新婦」


一瞬きょとんとしたが華子も負けじとニヤっとし

「ええ、新郎」

と腕に手をまわした……。







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