私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「33歳の人なの?!」


華子は頭をふるふるさせ


「“33歳年上”なの」


と、付け加えた。



百合の声はもう出なかったが


大きくあけられた口からは

のどちんこがお目見えし

目で働いている職人は

調子を狂わされていた。


華子は百合の反応を窺い

一呼吸おいてから付け足した。


「バツイチで、今

  若い奥さんがいて

   子供もいるんだ」



店内は二人だけの世界になり

華子は目の前に置かれた

アイスコーヒーのグラスに汗がたらりと流れ落ちるのを淡々と見ながら

口をつぐんでいた。




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