私に恋を教えてくれてありがとう【下】
百合は言った。

「落ち着きを求めたくもなるよね

 社会人だし。

 それにずっと一途だったから

 刺激がほしくなるよ」


ごく普通の態度を示したことに

華子は内心驚いた。


なんといっていいのだろう。

さしづめ二人は軽い世間話の最中をしていたような反応。


華子は百合の笑顔が曖昧でないか

瞳の奥に非難が潜んでいないか

目を凝らした。



「……!?

 何何?

 私の歯汚い!?」


百合はアーモンドスライスの降りかかったご飯を頬張りながら

前歯を華子の方に突き出した。


「ないない!!

 まぁ、挟まってたら

 何にも云わないで放置するけど」


華子節だ。


二人はにやっとし

胃袋の為に手と口を動かした。



……百合は思っていたよりずっと深く華子を理解していた。



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