私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「あったりまえでしょ!

 僕を差し置いて

 あいつなんかと仲良しして」



牧田はそしった。


「ちょ……

 私がいけなかったんですか?!

 私は大島先生が話しかけてきたから

 答えてただけじゃないですか!」


布巾片手に熱くなった。


「あなた、僕の介助のとき

 いつも素っ気ない!

 僕にもあの笑顔を見せてほしいもだ!」



華子の顔が歪んだ。



「それはちゃんと理由がありますよ!」


声が張り上がらない様集中しながら

バシッと言った。


「先生にはわからないんです

 貴方の介助をするの本当に

 神経研ぎ澄まさないといけないんですから!」


「なぁにをするっていうの?」


よもや自分は完ぺきな態度で診察を遂行しているといった模様。


立派な腹を突き出したこの男を殴る勢いで食ってかかった。



「先生は処構わず手を握ってみたり

 マスクの下で口をすぼめてみたり

 そういう行動一つ一つが嫌なんです!

 
 絶対に見られてます!

 だから私が素っ気なくしないと

 周りからどんな目で見られるか!

 “上”に立つ人間にはわからない下々の事ですから

 ご縁のない考えなんでしょうけどね!!」


シャー!っと蛇が威嚇する様に噛みついた。
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