私に恋を教えてくれてありがとう【下】
そして華子の心に今までとは違った思いが張り巡らされた。
“私はこの人を好きになったらきっと幸せになれる”
危険なかおりのしない
この心優しい男を想えば……。
何故周りにこんなに幸せそうに手をつなぐ人間が居るのに
何故私は愛する人とデートも出来ない。
カフェでランチも出来ない。
人目を気にして
暗く細い道で落ち合い
身をかがめて車に乗り込み
ホテルへ向かう。
車の中で前戯を済まし
我慢出来なくなった彼が華子を抱きかかえ
部屋へ入る。
“これは幸せか?”
“今の自分にとっての幸せはこれで合っているのか”
車の中で鳴り響く携帯を気にする彼。
それを見て葛藤した末
「私早く帰らないと」
と平然を装う自分。
こんな形で幸せなわけがないとわかっている……。