愛のない世界
彩香に傷つけられた男は、彩香の罵倒に耐えきれず、ホテルの窓から飛び降りた。


彩香の目の前で…


夢ではなかった。

現実だった。


彩香の前から、男は消えた…


それは一瞬のコトだった。



彩香は、初めて人を殺めてしまった瞬間。


なのに彩香は、自分が悪いとは思わなかった。


いや、思えなかった。


勝手に死んだ、男が悪い。


そう思えて仕方がなかった。



弱い男が悪い。


― だってそうでしょ。勝手に男が飛び降りたんだから。こっちが、迷惑よ! ―


勝手に声を掛けて、勝手にホテルに連れこんで、勝手に彩香を抱いた。

そして男は、勝手に飛び降りた。


それだけのコト…


だから、私はは悪くない、そう思った彩香。


そう、悪くない…


悪いコトなど、何もしていないのだ…。





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