愛のない世界
「イタッ!」
誰かとぶつかって尻餅をついた、彩香。


「あっ、す、すいません。大丈夫ですか…?」
40歳代の男が、彩香に手を差し伸べる。


その手を彩香は素直に掴み、男の顔をふっと見た。


そこに居たのは、見知らぬ男。

なのに、その男から目を逸らすコトが出来なかった。


彩香と男は、手を握り合ったままの状態で、しばらく見つめ合っていた。


それはたぶん、数秒のコトだったのに、数分にも数時間にも感じられた。


何故だろうか…。




< 45 / 94 >

この作品をシェア

pagetop